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花の擬人化を扱った創作企画用ブログ
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瓢箪と竜舌蘭の小話



「おい」

 玄関越しに呼びかけ、ほどなく薄汚れた年代物の戸を蹴りあげると荒々しくガラガラと音を立て引き戸を開ける。その先にはやれやれといった様子でわざとらしく肩をすくませる幼子の姿が視界に入った。

「……お前さん、もう少し丁寧に扱えんのか」
「四の五の言ういとまがあるなら、さっさと建て付けを直せ」

 久しい訪問に辺りを見回すが、依然として埃っぽい土間に気分を害する。想像に難くなかったが、いざ目にするとやはり気分の良いものではない。しかしながら、それを言いたてたところで簡単にはぐらかされるのは目に見えている。毎度の事だと半ば諦めながら、床を軽くはたいてその場に腰を下ろした。

「今日は1ケース頼むぞ。場所はいつものところじゃ」

 奥に一度身を引っ込めたかと思うと、次には見慣れたいつもの姿よりひとまわり大きい姿で、ビール瓶が詰まった箱を軽々と持ち上げている。ガチャガチャと音を立てながら、それを僕の横へと置いた。

「オオイヌノフグリのところなら、アンタが行け」

 その言葉に呼応するかのように一瞬にして老翁と成り果てたその男はわざとらしく咳込み、この老骨に鞭打てと言うのかなどと抜かした。いつものことながら立腹するのも馬鹿らしく、黙々と箱を外へと運び出し自転車の荷台に縄で巻きつける。

「縄を扱うのだけは、上手いのう」

 気づけば馴染みの姿に戻り、子供らしくその作業を覗き込んでいる。幼さの残る(と言うのも可笑しな話だが)その笑みに、不思議な感覚と把握できないもどかしさとにやり場のない苛立ちを覚える。

***

「僕はアンタが嫌いだ」

 作業を終え動きを止めたかと思うと、ぽつりとただ一言言葉をこぼした。その視線はわしに向けられたものでもなく、まるでうわ言のようであったが、思いがけない言葉に苦笑をもらした。

「わしは、お前さんが好きだ」

 途端ハッとしたようにこちらを見やり、妄言を嘯くなと険しい面持ちで言い放った。その射るような視線送る彼に呆気にとられながらも問いかける。

「何故そう思う?」
「アンタに好かれる謂れなどない」

 その真っ直ぐに言い切る姿に、くっくっと笑いが零れた。理由なしに人を恋い慕うやつが好かれる訳合い云々を求めるのかと、込上げてきた笑いを堪えきれずに漏らす。そのやりとりにイラつきを覗かせているやつの表情はさらに歪み、いつも以上に眉間に皺を寄せ、舌打ちをした。


「何がおかしい」
「お前さんは……随分と主観的じゃな。それでは世の中生き辛くはないか」

 予期しない相手に好意を抱かれるなど、珍しくもない些細なこと。好意に理論などいらない。しかしこやつは頭が固いのか、それとも未熟者なだけなのか、はたまた単なる馬鹿なのか、その真理に気づかないふりをしているように見える。主観と言う盲目に踊らされているのか、自ら望んで踊っているのか。互いが思い巡らすそんなしばしの沈黙を僕は、と言う言葉で彼は破り一呼吸置いて、そして続けた。

「人を達観し、何かも知り尽くしたようなアンタみたいになりたくない。それを客観視と呼ぶならば、実に空虚な言葉だな」

 憎悪のような羨望のような何とも言い難い眼差しは、何処か遠方を見つめているようで嫌いになれない。そんなわしの様子に毒気を抜かれたのか、彼はふぅと小さく息を吐いてスタンドを蹴りあげた。自転車を押し歩き、数歩進んだところで思い出したように口を開いた。

「アンタの言う好意は傲慢と紙一重だ」

 そう言い放つと自転車に跨り、よろよろとしながらも走り始めた。とことんやつとは合わないなと思いながらも、徐々に遠ざかっていくその背を見送った。


霧雨さん宅のふーちゃんを名前だけお借りしました!
話書くのとか久しぶり過ぎて\(^o^)/
要約すると瓢箪と竜舌蘭は対照的だぜやっほいってだけ

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